■はじめに
就職活動において、ITで人気がある企業といえば楽天の名前が浮かぶ方は多いと思います。しかしそんな楽天は今未曾有の危機に直面しています。
IT企業で大手だから。IT企業大手でイケてる社員さんが多そうだから。という理由で楽天入社を意思決定するのは少し危険かもしれません。
実際、私は「楽天なんか直近新しい大きな事業に挑戦するみたいだから、株価上がるっしょ!」のテンションで楽天の株を購入しましたが大失敗。長年塩漬けにしてましたが、昨日泣く泣く損切りをしました。(10万ほど損しました。笑)
そこで本記事では、安易に楽天株を購入して大損した私が今の楽天が窮地に立たされている理由、そして今後楽天が再起するための勝ち筋となり得る戦略を考察していきたいと思います。
就活中の大学生の方や楽天への転職を検討されている方が楽天の企業分析の情報の1つとして参考になる記事になれば幸いです。
■楽天の現状
冒頭楽天が窮地に立たされているとお伝えしましたが、「楽天 今後」「楽天 経営」とかでググってみると色々な記事が出てくると思いますが、そのほとんどが後ろ向きな内容が書かれている記事が多いと思います。試しに一度ググってみてください。笑
では、楽天が窮地に立たされているといっても具体的にどのくらい窮地に立たされているのか?を数値で見てみたいと思います。
私は企業分析をする際には「バフェットコード」というサービスを使っているのですが、このサービスとても優秀なので、ぜひ就活や投資で企業分析実施が必要な方はぜひチェックしてみてください。
バフェットコードから楽天の直近のIR情報をビジュアライズされているものを以下抜粋します。
左側のグラフが通年での売上高の推移になります。2022年12月期に発表された2022年通期の売上は2兆円に迫る1兆9,278億円という規模感です。そして時系列で見ても売上高は年々順調に成長していることが見て取れます。
転じて右側のグラフは通年の利益の推移になります。2020年ごろから赤字になっていることがわかると思います。そして直近の2022年12月期の決算ではなんと3,728億円の赤字という結果になっています。
■モバイルの誤算
では、なぜこのような状況になってしまっているかというと要因は明確です。モバイル事業への新規参画です。
以下のグラフは事業セグメントごとの利益を表しています。見てお分かりの通り、モバイル事業がフィンテック事業、そしてインターネットサービス事業で稼いだ利益を吹き飛ばしている構造になっていることがわかります。
なぜここまでモバイル事業で赤字を出してしまっているのか。そしてこれは楽天にとって想定の範囲内の状況なのでしょうか。
利益は単純な話、売上ーコスト=利益になるので、誤算があったパターンとしては
①売上が想定以上に伸びなかった
②コストが想定以上に嵩んでしまった
③売上も見立て以下だし、コストも見立て以上だった
④今の現状は想定内。
おそらく④のパターンはないでしょうか。ここまで株価を下げておいて、はい。今の現状は想定内です。は苦しいですね。もしそうなら損切りしてしまった私はどうなってしまうのか。
私の見立ては③だと思います。まず売上について。モバイル事業はARPPUという指標を持って収益の健全性が語られることが多いです。
ARPPUとは、有料ユーザー1人あたりの平均収益を表す指標。英語の「Average Revenue Per Paid User」の頭文字を取った略語になります。
つまり式にすると以下です。
ARPPU = 売上 ÷ 課金ユーザー数(ユーザー数×課金率)
楽天モバイルの大きな誤算は上記式の課金率にあります。微かに覚えていらっしゃる方もまだ多いと思いますが、楽天モバイルは参入当初、通信量が1ギガまでは無料!のプランをゴリ押ししてました。
しかし蓋を開くと1ギガ未満のユーザー割合が多く、全く有料ユーザーにならない事象が発生。楽天社長の三木谷氏が「すぐ無料プランをやめろ!」と激怒したとかしなかったとか。笑
次にコストについては、固定費と変動費に分けられますが、まず固定費については、基地局を自前で作るのには莫大なコストはかかりますが、基地局にかかるコストは相当なことがない限り計画とずれないと思います。
問題は変動費の方です。モバイル事業参入にあたり、広告費や人件費を大きく投入する必要があると思いますが、売上の部分で述べたように新規会員数の伸び悩みにより、この変動費が思ったよりも嵩んでしまったのではないかと想像してます。一時期篠原涼子さんと今田美桜さんのCMが延々と流れてましたね。
また結構いい立地に楽天モバイルの販売店舗をガッと出店もしてました。この辺にだいぶコストをかけすぎたのではないかと思います。
■楽天の今後の勝ち筋
モバイル事業によって大きな赤字を出し続ける楽天ですが、この状況をそこまで悲観していない記事もいくつか散見されました。最後に楽天が今後再起するための戦略はどこにあるのか?を考察していこうと思います。
結論、楽天の再起の鍵それは、「楽天経済圏で得た購買・決済データの最大活用」これしかないと思います。
そしてその要を握るのが楽天カードや楽天Payなどの決済事業にあると私は考えています。楽天カードでのクレジットカード決済、楽天Edyでの電子決済、そして楽天Payでのコード決済と幅広く決済手段を提供し、かつユーザー数も圧倒的に多い楽天だからこそ、莫大なユーザーの決済データを蓄積することができます。
この決済データを楽天市場における加盟店のマーケティング支援に活かし、EC事業の売上を一層加速させることが今後の楽天の事業戦略の柱になると思います。
しかしぶっちゃけ同じような事業戦略を今後の成長の筋として考えている企業があります。それがYahooや一休、そしてLINEなどさまざまなプロダクトを配下に持つZホールディングです。
Zホールディングスも決済ではペイペイを持っており、ECもYahooモールを持っています。ECは楽天に軍配が上がりそうですが、急激な成長を見せているコード決済においてはペイペイに圧倒的シェアを握られてしまっている現状です。
ペイペイもこれまでユーザー獲得のために莫大な資金を投じ、キャンペーンを実施してきたことで赤字続きの事業でしたが、直近ペイペイを一事業部から法人にする方針が示され、上場を睨んでいることを考えると黒字化に向けてペイペイで得た決済データを加盟店のマーケティング支援に活かす動きが活発になってくるかと思います。
Zホールディングスのみならず、通信大手のNTTドコモやKDDIをはじめ、リクルートといった企業も決済データという資産を活用すべく動きが活発になっています。
楽天はこの辺の企業との激しい競争に勝ち抜き、加盟店のマーケティング支援で最も価値を出せることを示さなければならないので、楽天モバイルでこけた分の挽回は簡単なものではないでしょう。というより茨の道になりそうです。
■終わりに
本記事では、楽天が今沈んでいる要因と再起のための今後の事業戦略についての考察を書いてきました。
楽天の株で損をしたことをきっかけに楽天の事業について深く考えましたが、就職活動での企業分析を深くしたい!という方はもしかしたらその企業の株式を幾ばくか購入するという手段は有効かもしれませんね笑(今は一株単位から株を買えるサービスとかも出てますし)
僕みたいに楽天ってなんとなくいけてそうなITだし、株上がるっしょ!という何も根拠のない軽い意思決定によって、株を買ったり、新卒・転職先として楽天を選ばず、ぜひ本記事を意思決定の一参考としていただけたら幸いです。