突然ですが、以下の記事が最近話題になったのをご存知でしょうか。
なぜリクルートは、取締役の女性比率を半分にまで高めようとしていると思いますか?そう、多様性をもたらすためですね。
本記事の本題はなぜリクルートは多様性を大事にするのか?そして、多様性とは何か?多様性がビジネスにもたらすものは何か?という切り口からリクルートの強さについて紐解いていく記事を書けたらと思います。
多様性について参考にした本は以下の本です。とても示唆に富んだ素晴らしい本でしたので、本記事で多様性についてもっと学びたい!と感じて頂いた方はぜひ読んでみてください!
<目次>
リクルートは何故多様性を重視しているのか
多様性がなぜ重要なのか
多様性とは何か
多様性が持つ威力
多様性を高めるためにすべきこと
終わりに
リクルートは何故多様性を重視しているのか
リクルートが多様性を重要視していることを理解するために、リクルートの強さの源泉について考えてみましょう。
リクルートは創業者の江副さんの時代から競争優位性の源泉は人であると常日頃からいっていた(そうです。僕は江副さん健在の時はリクルートにいなかったのでわかりませんが、江副浩正という本に書いてあったのでおそらくそうです。)
そして江副さんがその競争優位性を人においている中で耳にタコができるくらい言っていたのが「自分よりも優秀な人を採用しろ!」だそう。
この言葉からも採用には一際力を入れて優秀な人材を獲得することの重要性が理解できると思います。
しかし、リクルートは創業から約60年を迎え、時代やビジネスのトレンドも大幅に変化してきました。その中で同じように変化したことがあります。それが、個人主義からチーム主義への変化です。
この変化のトレンドが最近“多様性”というふわっとしたコトバが浸透している所以なのですが、この多様性についての概念については次章でくわしく述べます。
つまり、リクルートが多様性を重要視している理由、それはトヨタやソニー、キーエンスのような有形の突出した有形資産があるわけでなく、無形のサービスで日本で現在6番目に価値がある企業である背景には競争優位性を保つほどの優秀な人材の獲得にどこよりもこだわってきた歴史、そしてその優秀な人材がより高いパフォーマンスを発揮するために、“最高のチーム”を形成し、今よりももっと企業価値を上げていくためであると言えると思います。
多様性がなぜ重要なのか
リクルートがなぜ多様性という概念を重要視しているのか?についての前提をお伝えしました。
では、次にその“多様性”というわかりそうで良くわからない抽象的な概念について考えてみましょう。
<多様性とは何か>
では、本記事を読んで頂いている皆さんにお聞きしてみます。多様性とは何か?と問われ、多様性を定義するとしたらどのように定義をするでしょうか。
まず大前提、多様性と一口にいっても大きく2つに分解できます。
まず一つが人口統計学的多様性と呼ばれる、いわゆる男性・女性の違いや人種の違い・文化の違いなどが含まれるものです。
一方で2つ目に分解されるのが認知的多様性と呼ばれる、いわゆる自分が現象や事象を解釈する際に用いるフィルター、つまりバイアスのことを指します。
2001年にミシガン大学の心理学者であるリチャード・E・ニスベットと増田貴彦の両氏がこの認知的多様性の違いについて面白い研究結果を発表しているので、ご紹介します。
日本人とアメリカじんの2つのグループに分け、水中のアニメーションをみせ、その後にお互いのグループに何が見えたか?と質問をします。
すると、日本人は背景について以下のように語ったそうです。
「川のように流れがあって、水は緑色でした。底には石や貝や水草が見えました。」
一方でアメリカ人は魚について以下のように語ったのです。
「大きな魚が3匹左に向かって泳いでいった。お腹が白くてピンクの斑点がありました。」
この研究は人口統計学的多様性が認知的多様性と一定相関があることを示しています。
しかし、相関しない場合もあるため、今回は認知的多用性について詳細を深掘りしていきたいと思います。
認知的多様性とは一言でいうと、人が持っているパースペクティブの集合体を指します。
パースペクティブとは、人が何か目の前の事象・現象を解釈する際に用いるモノの見方の観点と言い換えることができます。
では、次にこの認知的多様性が似通っている場合と異なる場合でのパフォーマンスの違いについて見てい来ましょう。
<多様性が持つ威力>
リクルートが多様性を大切にしているわけがより一層の価値貢献をするための高いパフォーマンスができるチーム構築のためであると述べました。
つまり、多様性=高いパフォーマンスにつながるということになるがこれは本当なのでしょうか?
高いパフォーマンスを出す上で将来についての予測をいかに正確に行えるかは重要なファクターとなります。
なぜなら、予測と意思決定のシャープさは因果関係にあるからです。この予測と多様性の関係についても面白い研究があるのでご紹介します。
デューク大学のジャック・ソル教授がエコノミストによる2万8000件の経済予測を行いました。その結果、トップの成績を納めたエコノミストの正解率は全エコノミストの平均よりも約5%以上高いことがわかりました。
しかし、個人予測だけでなく、上位6人のエコノミストによる予測の平均正解率を分析すると、個人トップの数値よりも上6人の平均の方が高いことがわかったのです。
なぜか。これは、「集合知」の力であると「多様性の科学」では述べられています。
つまり、1人のエコノミストが経済予測に利用する経済モデルで完璧なものはありません。しかし、様々な経済理論をかけ合わせると1つの経済理論ではカバーできない部分も補い、予測がより精緻になる。それが、ソル教授のエコノミストにおける研究結果の要因だということです。
では、最初の問いに戻りましょう。多様性はパフォーマンスと関係があるのか?
それは、エコノミストの研究結果の要因として述べられている「集合知」、つまり、1人ではカバーできない範囲をチームでなら広範囲でカバーできるという根拠から、関係があると言えそうです。
しかし、チームでの「集合知」を考える上で注意すべきことがあります。
それは、チームで似通った知識では、パフォーマンス向上には繋がらないということです。
エコノミストの経済予測の研究に戻って考えてみましょう。
上位6名のエコノミストが全く同じ経済モデルで予測を行えば、回答が同じになり、上位6名の平均がトップより高いという現象はあり得ません。
上位6名が違った経済モデルを駆使し、違った角度から予測をすることが重要なのです。
仕事でも同じです。同じような強み、価値観の集合したチームではなく、全く異なる強み、価値観を持ったチームで結束することが高いパフォーマンス、ないしは革新的なアウトプットにつながるのです。
<多様性を高めるためにすべきこと>
これまでリクルートが多様性を重視しているわけ、そして多様性の概念についてや多様性がもたらす効能についてお伝えしてきました。
最後に、今後多様性が重視されるビジネスの世界で、皆さんが多様性を見方につけ、高いパフォーマンスを出していくにはどうすればよいか?について触れていきたいと思います。
多様性を活用できる人材であることをアピールするには“自身のバイアスと戦う”これに尽きると思ってます。
どういうことかというと、自分の偏見や意見にとらわれない。他者の意見を否定する前にまず受容するということです。
人は誰しもが自分は優秀である。ないしは、優秀であるはずだ、という無意識のバイアスがあると思います。進んで自分はヘナチョコだと思いたい人は少ないはずです。
だからこそ、ミスをしてしまった時にミスを隠したり、他の人のせいにしてしまう。または、自分の考えが絶対だと固執し、他人の言葉や意見に耳を傾けない。
この自分のエゴこそが、多様性を台無しにする要素だと思います。
なので、多様な考え、価値観を受け止め、自分の世界を広げ続けるには、意識的に自分のエゴと向き合い、他人をリスペクトできていないと感じる言動、行動に注意を払い、常に謙虚である姿勢がもっとも重要であると言えると思います。
そして、リクルートはそんな人材こそ、”優秀”と定義しているのではないか。僕はそう思ったりしています。
終わりに
今回はリクルートに関する記事をきっかけに多様性という概念について記事を書いてきました。
別に多様性はビジネスの場だけで重要な概念ではありません。パートナーや家族との関係性をよりよいものにしたい。もっと人間的魅力を向上させたい。そんな人も必ず理解した方がよい概念でしょう。
多様性とは、他者視点に立つための第一歩であると僕は思ってます。
つまり、幸せを感じるための第一歩が多様性とは何か?を理解することではないでしょうか。