就職活動を納得のものにするために重要なのが、自己分析による自己理解と自己PR、つまり自己発信でしょう。
これは、学生の方が新卒の就職活動に臨むときも、社会人の方が転職活動に臨むときも変わらずだと思います。
しかし、意外にこの自己分析、自己理解、自己発信が難しい。何から始めたらよいのかわからない。と悩む方も多いのではないでしょうか。
自己分析と聞くとモチベーショングラフを書いたり、ノートに強みを書き出したり、などがイメージされやすいと思います。
ですが、なかなかうまくいかない。そんな時に活用できるのが、自身の強みや資質をデータで客観的に見るということです。
何事も考えごとをするときに白紙の状態からは骨が折れます。なにかしら、考える上でのきっかけや仮説があるとグッと思考しやすくなると思います。
本記事では、僕が所属するリクルートをはじめ、多くの企業で導入されている"FFS理論"という自己分析・理解のための理論・ツールをご紹介したいと思います。
是非、本記事を読まれたあとは実際にツールを活用してみてください!
<FFS理論診断付き参考文献>
<目次>
FFS理論とは何か?
FFS理論を構成する5つの因子
凝集性・受容性・弁別性・拡散性・保全性
FFS理論における留意点
就活での理論活用の3STEPS
自己理解
自己肯定
自己発信
リクルートがFFS理論を活用する理由
終わりに
FFS理論とは何か?
まず、FFS理論とはどのような理論なのか?について説明していきたいと思います。
FFS理論はストレス理論がベースになっており、環境や刺激に対する捉え方を5つの因子に分け、定量化することができる理論です。
言い換えると、性格や資質を明らかにする理論とも言えます。自分がどのような環境、状況であれば適度なストレスで物事に取り組めるのか?
一方で、どのような環境、状況だとストレスを過度に感じてしまい、行動が止まるのか?がわかります。
<FFS理論を構成する5つの因子>
FFS理論では、ヒトの性格・資質を5つの因子で表しています。5つの因子について、概要をお伝えしていきます。
5つの因子についての詳細は、後述の本に詳しく記載されているので、合わせてご参考までに。
凝縮性
まず1つ目の因子が凝縮性です。
凝縮性とは、固定・強化させようとする力の源泉となる因子になります。
自分の考えや意見へのこだわりが強く、明確にある自身の価値観に従って物事を判断する人に当てはまる因子になります。
この凝縮性に当てはまる人は、日本人には非常に少なく、アメリカ人には非常に多いというデータもあります。
国民性もFFS理論には反映されていて面白いですね。
受容性
2つ目の因子が受容性です。
受容性とは、外部を受け入れようとする力の源泉となる因子になります。
優しく、柔軟性があり、面倒みがよい人に当てはまる因子になります。この因子は日本人に一番多い因子と言われています。
弁別性
3つ目の因子が弁別性です。
弁別性とは、相反する二律にはっきりと分けようとする力の源になる因子になります。
合理理的で計算高く、何事も白黒はっきりさせることを好む人に当てはまる因子になります。
拡散性
4つ目の因子が拡散性です。
拡散性とは、飛び散っていこうとする力の源泉となる因子になります。
活発で行動力があり、感情的で面白いと思うことならなんでも取り組みたい!と感じる人に当てはまる因子になります。
保全性
最後の因子が保全性です。
保全性とは、維持するために工夫改善をする力の源泉となる因子になります。
プランを綿密にたて、コツコツと物事を前に進めることが得意な人に当てはまる因子です。
<FFS理論における留意点>
以上、FFS理論を構成する5つに因子についてご紹介しました。
補足として、FFS理論を活用する上で留意すべき点について2点お伝えします。
因子の強さに優越はない
まず、それぞれの因子において、片方が優れている、劣っているという捉え方は禁物です。
例えば、拡散性と保全性は基本的には相反する因子なので、どちらか一方が資質として表れますが、拡散性の方が、好奇心があり、色々なことに挑戦する。一方で保全性はコツコツと物事に取り組むという特徴を比べると拡散性の方が優れていそうな印象を受ける方が多いかもしれません。
しかし、あくまで、資質なので、優れている、劣っているはこの因子をどう活用するか?の文脈であって、因子自体に優劣はありません。
各因子には、ポジティブとネガティブな側面がある
因子によってその人の強みが決まりますが、その逆もしかりで、因子がその人の弱みになるケースもあることに注意です。
その人の個性を構成する因子の特徴がポジティブに発揮されたら、「強み」になり、ネガティブに発揮されたら「弱み」となります。
たとえば、拡散性が強い人は、ポジティブに拡散性が発揮されている場合は、活動的で、行動ファーストであり、どんどん物事を前に進めることができます。
一方で、拡散性がネガティブに発揮されてしまうと、継続しないで色々な仕事に手を出してしまうなど、一貫性がない、と周りから捉えられてしまうことがあります。
このように、各因子の理解を深め、因子を常にポジティブに発揮するには?ということを意識し、行動に移していくということがFFS理論を活用する上では重要になるのです。
FFS理論の詳細について
FFS理論について、概要をざっくりとお伝えしてきましたが、より踏み込んでFFS理論を学ばれたい方は、以下の本を購読されることをお勧めします!
自分がどの因子かを把握するための簡易診断もついているので、ぜひ購入して、自身の因子を把握してみてください!
就活での理論活用の3STEPS
では、FFS理論を実際に自己分析で活用し、就活で活かすためのステップについて、お伝えしていこうと思います。
ここからは、FFS理論で自分の因子を明らかにした後に読んでいただくとスムーズに活用に移れると思いますので、以下の本から自身の因子を明らかにすることをお勧めします。
<自己理解>
まずは、FFS理論をもとにした自己理解です。
FFS理論で自己理解をする際に重要なことは、「なりたい自分」ではなく、「なれる自分」から着目するということです。
では、日本人に多いとされる保全性の因子を例にFFS理論の因子特性から、どのように自己理解に繋げるかについてみていきたいと思います。
前章でお伝え下通り、保全性とは、維持するために工夫改善をする力の源泉となる因子になります。プランを綿密にたて、コツコツと物事を前に進めることが得意な人に当てはまる因子です。
ですので、保全性の人の強みとしては以下のような言語化ができるのではないでしょうか。
・物事に取り組む際に慎重に準備をしてから取り組むため、ミスなくスムーズに、かつ着実に物事を前に進めることができる。
・小さな積み重ねの努力が得意であり、着実にしっかりと成長することができる。
このように因子の特性から、自分なりに自分の強み、特性を言語化してみましょう!FFS理論が考えるきっかけになるので、言語化しやすいはずです。
<自己肯定>
次に自己肯定です。自己肯定では、自身の「弱み」、つまり自身の因子がネガティブに発揮されてしまう状態をいかにポジティブに発揮される状態、すなわち「強み」に変換していくか、を考えることになります。
では、これまた日本人に多いとされる受容性を例に、考えていきましょう。
前章でお伝えした通り、受容性とは外部を受け入れようとする力の源泉となる因子になります。優しく、柔軟性があり、面倒みがよい人に当てはまる因子になります。この因子は日本人に一番多い因子と言われています。
しかし、受容性の因子がネガティブに働くと、周りに流されてしまったり、いっこうに意思決定ができない、なんていう状態に陥ってしまう可能性があります。
では、受容性因子の強い人が、周りに流されず、チームで重要な意思決定をする為にどう因子の特性を活かせるでしょうか。
例えば、受容性の強い人は共感が強みとなります。ですので、意見が対立している際は、双方の言い分をしっかり受け入れ、整理した上で折衷案を見つけ出す役割を担うことができます。
このように、因子がネガティブに働いてしまいそうなシーンでも、どう意識的に因子をポジティブな活用に持っていくか、を言語化しておくことは、セルフマネジメントにおいてとても重要になります。
<自己発信>
最後が、自己発信です。自己発信とはいわゆる自己PRです。就活や転職の際に、自分を採用することによるメリットを伝えることが重要です。
では、どのようにしたら、採用担当者に自身を採用するメリットを伝えられるでしょうか。意識すべきポイントは3つです。
まず1つ目は、「自分の強みを正しく理解できているか?」ということ。
そして、2つ目は、「その強みを活かした経験があるか?」ということ。
そして、3つ目は、「トラブルが起きたときどう解決したか?」ということ。
正しい自己理解によって自信の「強みの活かし方」を知っている人は、採用側からすると「欲しい人材」に見えます。
FFS理論をベースに自身の「強み」の言語化を行いましょう。
リクルートがFFS理論を活用する理由
観点を変えて、組織としてFFS理論を活用し、強い組織づくりに取り組んでいる事例を一つご紹介したいと思います。
FFS理論は自己分析のツールのみならず、強い組織づくりのためのツールでもあります。
FFS理論を活用している企業の例として、私が所属しているリクルートの例をご紹介します。
リクルートは、社長自らがFFS理論を活用したコミュニケーションを取るなど、近年急速に組織としてFFS理論の活用推進を行なっています。
なぜ、リクルートはFFS理論を組織として活用するのか?背景には2つの理由があります。
<“チーム”に価値観を置く組織文化>
リクルートは、“チーム”でのパフォーマンスをいかに最大化させるか?という問いを重要な経営アジェンダとして持っている会社です。
“チーム”で高いパフォーマンスを発揮する上で重要なことは何でしょうか。
いくつか要因ありますが、今ホットなところでいくと“心理的安全性”という概念でしょう。
“心理的安全性”とはざっくりお伝えすると、職場において、メンバーがリスクなく自分の意見を主張できると感じられている状態を指します。
そしてこの“心理的安全性”を保つための第一歩はリーダーとメンバーとの相互理解です。この“相互理解”、つまり関係性構築のためのツールとしてFFS理論を活用しています。
<“強み”に着目したチームビルディング>
そしてリクルートは“チーム”のパフォーマンスを最大化させるために、“強み”に着目したマネジメントをしていくことをマネジメントポリシーとして定めています。そしてこの個々の“強み”の理解をサポートするのが、FFS理論になるのです。
マネージャーがメンバー1人1人の強みを一から把握しようとすると莫大な時間がかかってしまいます。しかし、FFSりろんのデータをもとにメンバーと関わることで、白紙の状態よりは早くメンバーの強みの把握につなげることができます。
終わりに
本記事では、就活や転職ときに必ず必要となる自己PRの言語化をサポートしてくれるFFS理論についてご紹介をしてきました。
FFS理論は言うなればとてもシンプルな理論です。しかし、シンプルだからこそ、活用しやすい理論だと個人的には思っています。
是非、理論もとに自己分析を進め、納得のいく就職活動につなげていただくきっかけに本記事がなれれば幸いです!