はじめに
仕事をしていて計画通りに物事が進まない、、、という方いらっしゃいますでしょうか。おそらくほとんどの方は一度はそういった経験があるかと思います。
自分が起案した企画や自分がプロジェクト責任者でなければもしくは他人事でふーんといられるかもしれませんが、もし当事者として計画がうまくいかないことを想像すると最悪ですよね。
そんな今まさに自分が企画した案件が動き出そうとしている、または自分が責任者として立っているプロジェクトが動き出そうとしているといった方にぜひ読んでほしい本が出ました!
絶対読んでほしい一冊
『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらは何をしたのか?』でございます。
本著が提示する論点と主張
この本が論じる論点と見解は非常にシンプルです。
論点:「ビジョンを計画に落とし込み、首尾よく実現させるにはどうすれば良いのか」
主張:「ゆっくり考えて、素早く動く」
タトゥーであれ、結婚であれ、大型プロジェクトであれ、慎重に考え抜く必要性は重々理解しているはずなのに、なぜそうできないことが多いのだろうか。
(グサっと突き刺さるものがあるのは私だけだろうか。)
そしてこの主張を支えるための数多くのユニークな事例がいくつも登場してきます。いくつか本著で紹介されている事例をご紹介したいと思います。
失敗事例:素早く考え、じっくり動く
事例1:どこにもいかない新幹線
まず真っ先に失敗プロジェクトの事例として紹介されているのが「どこにもいかない新幹線」と揶揄されているアメリカ西海岸の大都市ロサンジェルスとサンフランシスコ間を結ぶ大型ブロジェクト「カリフォルニア高速鉄道」である。
着工から14年が経過した今、プロジェクトの見通しは以前不透明のままになっている。
コスト見積もりは当初330億ドルの想定で着工されたが、蓋を開けてみると、430億ドルになり、その後680億ドル、そして最終的には880億ドルまで拡大してしまっている。
この計画は「徐々にうまくいかなくなった、のではなく、最初からうまくいっていない」つまり、計画段階でそもそも実現が不可能であったと示唆されている。
なぜそんなことが起こるのか。
カリフォルニア高速鉄道プロジェクトの実行開始時にあったのはせいぜい「ビジョン」や「願望」に過ぎなかったから。だから実行になった際に問題が続出する。
計画が実行に移されるのを見て、誰もが満足する。だが計画フェーズで見過ごされた真剣に検討されなかった問題がすぐに露呈し、急いで事態の収拾に奔走する。
するとまた別の問題が発生し、さらに奔走する。これが「故障の修理のループ」である。
さて、あなたも仕事で身に覚えがあるだろうか。
事例2:ペンタゴン
次に失敗例というよりかは失敗に終わるスレスレだった事例としてペンタゴンが例として挙げられています。
ペンタゴンは元々は今ある場所とは違う「アーリントン試験農場」と呼ばれる平地に当時フランクリン・ルーズヴェルト大統領の元、陸軍建設部門を統括するブレホン・サマーヴェル准将は建設予定であった。
しかしこの「アーリントン試験農場」のすぐそばには、アーリントン墓地があり、この墓地には南北戦争以来の戦死者や退役軍人、そしてジョン・F・ケネディの墓がある。
この墓や丘になっており、墓地からはワシントンDCを一望できる絶景となっている。
しかし、あろうことはどの墓地から見えるワシントンDCの絶景を塞ぐ位置に当初ペンタゴンは設計されようとしていたのである。
ペンタゴンの事例では、「まずは行動あるのみ」というスタンスがBIG THINGSでは大きな過ちにつながることを示唆している。人は慎重に考えるよりも、早く方針を決めたがる。そしてその方針は唯一絶対のものに感じてしまう。
自分に置き換えて考えてみると、何も方針が決まっていない状態のモヤモヤ感に耐えられなくて、とりあえず!で方針を決してしまったことはないだろうか。
成功事例:じっくり考え、素早く動く
さて、では転じて「じっくり考え、素早く動く」を体現し、大成功を遂げたBIG THINGSをご紹介していきます。
事例1:エンパイア・ステート・ビル
成功事例のトップバッターとして紹介されているのが、かの有名なニューヨークマンハッタン島に建築されたエンパイア・ステート・ビルです。
このビルですが、なんと驚くことに18ヶ月間という短い期間で竣工したそうです。まさに素早く動く、が体現された結果と言えるでしょうか。
そして素早く動けた要因が、じっくりとかつ確実な準備期間、いわゆるじっくり考える期間があったからなのです。
エンパイア・ステート会社は1931年に刊行された本の中で以下のように述べています。
建築家は、どの長さの梁が何本必要になるか、鋲やネジが何本必要になるかを、現場作業が始める前に正確に知っていた。
エンパイア・ステート・ビルに窓が何個取り付けられるか、石灰岩のブロックが何個使われるか、アルミとスチール、セメント、モルタルが何トン必要になるかを知っていた。作業が始める前から、エンパイア・ステート・ビルは図面上で完成していたのである。
事例2:ピクサーの作品作り
『トイストーリー』や『インサイドヘッド』などのアニメーションヒット映画作品を出しているピクサーの作品作りのプロセスもBIG THINGSを成し遂げるためのTipsが多く詰まっているとして紹介されています。
成功の要因として、じっくり考えることが示唆されていますが、いわゆる机に向かって一人で悶々と頭を悩ませることがじっくり考えることではありません。
じっくり考える、いわゆる計画立案とは「能動的なプロセス」であり、「行動」が伴う。
計画立案を静的で、抽象的、形式的な行為とみなす、その姿勢はBIG THINGSを生み出す大きな障壁となる。
代わりに、「試行、学習、反復」の能動的な試行錯誤のプロセスとみなすべきである。
話題のドラマでも・・・
最近Netflixで配信され、話題沸騰のドラマシリーズ『地面史たち』に登場する青柳部長もまさにこのダメなパターンの典型だろう。
ネタバレにならないように詳細は触れないが、この『地面師たち』という作品は、実際に2017年4月に実際に起きた五反田駅前の広大な土地を巡り、不動産大手の積水ハウスが地面師詐欺にあった事件をもとに描かれている作品です。
本当に今回のテーマとぴったりですし、純粋にエンタメとして最高に面白いので、気になっていただいた方はぜひご視聴ください!ネットフリックスで独占配信となっております。
ちなみにネットフリックスの原作は以下の小説となってます!時間があれば、ネットフリックスを視聴される前に、小説を読むとさらに作品を楽しめると思います!
終わりに
さていかがだったでしょうか。本著に出てくる事例はほとんどがどデカい案件ばかりで自分には関係なさそう。と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
とんでもないです。抽象化すれば我々が仕事やプライベートで向き合っているTHINGSにも必ず適用が可能な概念が「じっくり考えて、素早く動く」の主張に濃縮されていると私は考えています。
ぜひ本著、そして本記事を踏まえ、ご自身が仕事、もしくはプライベートで着手する”BIG THINGS”を成功に導く良い変化を起こしていただくことを願っています。
参考著書